去年の今ごろ、私は働かずに老後を過ごすことを夢見ていた。

仕事が嫌いというより、人が嫌い。
人付き合いを考えると、水だけしか飲めなくてもこの部屋から出たくなかった。

失業保険と退職金と厚生年金で65歳までしのげたら、
後は貯金を切り崩しつつ年金暮らしをするつもりだった。

なのにねぇ~、現実は失業保険を受給しつつパートに出てしまっている。

…………………

長く働く気なんかなかった。
前の取引先から声をかけられてパートに出てはみたけれど。
嫌になったら即撤退のつもりだった。

だからこの冬、通勤時間の長さにウンザリして、膝の痛みがとれなくて
雇い主には次の人を探してもらうようにお願いをした。
「この仕事は信用が大事な仕事で、誰でもって訳にはいかないのよ。」
と、言ってはいたが…

多分、雇い主の中ではそれで話に決着がついていたのだろう。
あるいは、そのことをすっかり忘れてしまったのか?

1ヶ月も経たぬころ「夏になったら、冷蔵庫で炭酸冷やしましょうね。」って…
ついつい私も「そうですね。」って…

アレ?
どうやら私は、夏になってもここで働いているってことらしい。

…………………

雇い主はとても優しくて、とてもおしゃべり。
そして、ものすごーく忙しい。

雇い主が留守の間、私はコーヒーをすすりながら、黙々と仕事に精を出す。
とはいっても、雇い主がいないとき、分からないことに出くわすと、
過去の資料とにらめっこばかりで、仕事はのたりとしか進まない。

仕事をしに来てるのに、仕事ができないってのは、いやなのよ。
なんかね、自分に対して「この無駄飯食いがぁっ!」て、怒鳴りつけたくなる。
まあ、出来もしないこと、出来たふりしても仕方ないけどさ。

なので「これだけしかできてませんが…」と言うと
「いいのよ、その内慣れるわよ。」と寛大な言葉が帰って来る。

そして、大量のおやつを買ってきて「休憩しましょっ」と。

そこからは、話の洪水に私はおぼれる。
多分、もの凄いストレスを抱えているのだろう。
高音のその声が、頭の芯まで突き刺さって、耳鳴りがするほど。
「ね。仕事しましょ。全然進んでないから。」と、
話をさえぎって、ようやく私は雇い主の熱狂から解放される。

こんなだから、仕事は全く辛くない。
雇い主の話は自慢話とグチのオンパレードだが我慢はできる。

でも、本当のところやはり辞めたいと思っている。
でも、多分辞めない。

…………………

以前、思い描いた生活が不可能だとは思わないけど
それはやはり現実的ではない。

私は急にお金が惜しくなった。
自分の貯金が減ることに恐怖を感じるようになった。
健康でいつづけることにも自信がなくなった。

ならば、今は働くしかないんじゃね?

ということで、私はパートを継続することにした。



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