旧会社の改修工事が終わり、新たなテナントに引き渡しも済んで、
こっち方面の対応はお役御免となっている。

といっても、元々は社長の個人資産に関するものなので、
私には関係のない「お役」だったのだけど
前社長の時代からずっと管理をしてきた手前、かかわらずを得なかった。

改修工事の際に起こった数々のトラブルで私は自分のたくましさを知り
もの凄ーく自分にガッカリした。
私ってこんなに激しく気が強かった?

………………

一番困ったのは、社長が業者にきちんとクレームを入れないこと。
何故に自分の資産を守ろうとしない。言うべきことを言わない。
先方の明らかなミスで想像外のトバッチリを受けているのに
カッコつけてるんだかなんだか、高みの見物的な態度のおかげで
危うく丸め込まれそうになる。

イヤー、頭のいい人なのだよ。
とても常識的な人なのだよ。
育ちが良くて、温厚な人なのだが…

その温厚さ、育ちの良さがどうにも仇になっている感じで
私が業者にクレームを入れていると、「まあまあ…」と私をなだめにかかる。

はぁ~! である。

あんさん 社長、業者の前で私をなだめてどうする気?
あんさん 社長は業者に「資産価値を下げてくれてありがとう。」でも言うつもりか?

業者との交渉で私のサイフが暖かくなることはないし
辞めていく私には、全くもってどうでもいい話しではあるが
このビルに関することは、持ち主以上に知っている。

乗りかかった船。行きがけの駄賃。

私の退職より先に改修工事が終わるなら、
アホだと自覚しながらも、途中で放り出すなんて私にはできない。
無駄な義務感と責任感がムラムラと湧き起こる。

で、業者と理詰めで激しく戦うわけだ(笑

その横で、「別にいいんじゃない?」って感じをかもし出されて、私は戸惑うわけ。

あんさん、この工事にいくらかかると思っているの?
私のオンボロマンションなら、4戸分買っておつりが出るよね。
てか、後ろから撃つようなことを言うのは控えてくれませんかね。

「このビルの最後を、どうせ俺は見届けられないから、適当でもいいんだよ。」
って、言葉に
「確かに先に死んじゃうんでしょうけど、子どもや孫が引き継いだとき
 困らないようにするのが、親の義務でしょう!」
と、言ってやったわ。

どっちが身内よ・・・

………………

ようやく改修工事が終わって、社長が言った。
「こちる君のおかげで、無事に工事が終わった。」と。

ああ、とりあえず感謝はされているらしい。
撃たれたことは過ぎたこととして忘れてあげよう。

「退職金。たーんとはずんで下さいね」(笑


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