帰宅してからドラッグストアとスーパーとホームセンターに行って来た。
日が落ちて間もない空の、白くて丸い月を見つめながら。

……………

先週、美容院の帰りにもスーパーに寄った。
いつものことだが、重たいのにキャベツなんか買って、
ああ、もっと近所のお店でも売ってるのにバカだ・・・
と後悔しつつ、かなりの距離を歩いて
もう、おばちゃん歩きたくない。座りたい。と、一人だだっ子をしかけたとき
目のはしにツーッと黒いスジが流れたように見えた。

滑空する黒い鳥。
カラス?かと思って見つめていると、いつまでも羽ばたかない。
その鳥は、翼を広げたままゆるやかに円を描きはじめた。

ああ、トンビか。

トボトボと歩きながら、トンビの姿を目で追う。
斜め45°の空に大きな円を描きながら、
静かに角度をあげ、やがて私の頭上に。

首が疲れた私は、誰もいない中小路で立ち止まり空を見上げた。
天頂には薄白くはかなげな細い月があった。

トンビは羽ばたきもせぬまま上昇していく。
うまく風をとらえたのか?
だとしても、なんだか不思議だわ・・・身じろぎもせず天を目指すって。

トンビは月の周りを静かに回って、どんどん小さくなっていく。

近づく車の気配に気づいて、何ごともなかったように歩きだし、
車をやり過ごして空を見上げたら、トンビの姿はもうなかった。

……………

宮澤賢治は得意ではない。
食わず嫌いならぬ、読まず嫌い。
まあ、嫌いというわけではないけど、食指がのびない苦手な作家。

むかーし、昔、国語の教科書に、『よだかの星』があった。
 宮澤賢治『よだかの星』は、青空文庫で読むことができます。←クリックしてね

“よだかは実に、みにくい鳥です。”から始まる文章は、
切実な痛みをともなう物語だったように記憶しています。

「不条理」「理不尽」

宮澤賢治の小説を何冊か読んだことはあるのだけど
この『よだかの星』のように記憶に残るものはほとんどありませんでした。

……………

はて、月を目指していたトンビは、無事に月と結ばれたのだろうか?

あの日、キャベツをぶら下げて空を見上げる還暦女の頭の中は、
なかなかロマンチックなものでした。

今日の買い物、オレンジ・土・肥料・クリーム(顔用)・その他。
腰の調子がおかしい・・・懲りないヤツだ。



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