道を歩いていると、どこからともなくコツコツと音がする。

カラスが電線のカバーをつついていた。
ずいぶんと真剣に執拗に。

何してんのかねぇ~と見ていると、カラスから数メートルのところでスズメが鳴いていた。

あ。もしかしてスズメさん、電線カバーに巣を作ってしまったの?
もしかして、卵か雛がそこにいるの?

カラスがどんなに頑張っても、電線カバーを壊すことは無理だと思うのですが…


私、カラスが嫌いじゃないのよ。

昔、アパートの2階に住んでた頃、子育て中のカラスにこっそりエサを差し入れてたわ。

始まりは、賞味期限が切れたハムをカラスに放ってやったことから。

用心深くヨチヨチ歩いて、ハムを咥えると急いで草むらにいくのよ。
カラスって、食べ物を草陰とか木の枝の隙間に隠すのね。
それが可愛く見えて何度かハムを放っているうちに癖になってしまった。

って、ちょうど繁殖期で子育て中だったんだと思う。
渡りに船って感じだったのだと後から気づいた。

嵐の夜。外の天気はどんな感じ?と、窓を開けたら。
雨に打たれながら電線にカラスが留まっていた。
お互いに驚いて、「ワオゥッ!」ってなってしまったのだけど
どうやらカラスは、近くの木に巣を作って子育てをしていたらしい。

なので、毎日カラスはやって来る。
でも、さすがに窓からってぇのはマズイと思って、裏の物置の屋根にエサを置くことにしたw
ここなら木が視界を遮って誰にも見えない。

いつも夫婦でやって来て、交互に見張りながら私の放るエサを巣に持ち帰っていたのだと思う。

そんなある日、2羽のカラスが3羽に増えた!
数日後には4羽に。その数日後には5羽に。

生まれた順番にビミョウに雛っぽさが残っていて、
3番目の子は、大きく口を開けて「えさちょうだーい!」って
親ガラスにおねだりをしていた。

その時、親ガラスが激しく鳴いて、子ガラスは木の枝に身をひそめた。
スクランブルで父さんガラスが飛び立ち、近づいていた別の大きなカラスを追い立てた。

家に来てたカラスは、ハシボソという種類で身体が小さかったのよ。
黒くなければ大きめの鳥って感じ。
それが、身体もくちばしもごついハシブトガラスを撃退したの。

普段はハシブトにエサをかっさわれても黙っているのにね。

嵐の夜の見張りといい、このスクランブルといい、親の愛情って凄いと感動してしまった。


スズメもカラスも親心は同じで、子どもを育てる必死さは変わらないのよ。
スズメが青虫を食べるのも、カラスがスズメを食べるのも
命のために命を奪うことに変わりはないのよね。

まあ、青虫は気持ち悪いけど、スズメは可愛いから心情としては微妙だけど
それが自然界で生きるということなんでしょう。

なんかねぇ、過保護に育ったアホな人間の事件を見るたび
人間て、衣食住、あらゆる場面で無駄に命を奪う生き物だと思ったりするのです。

カラスより愚かだと。


※因みに巣立ちが終わると、カラスたちは来なくなりました。



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